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ヴァイオリン選びで誰もが惑わされる、相談相手が発した言葉

インテルメッツォの第22回です。

今回も引き続き、よくある3つの行為(相談、研究、比較)の誤り について、私の独断と偏見を展開していきたいと思います。

前回までのおさらいですが、 相談相手として

1)ヴァイオリンの先生

2)学校の先輩

3)最近楽器を購入した仲間

が選ばれるケースが多いことをお話ししました。

私の結論としては、ご自分と比べて著しく楽器選びに長けている人は、そう多くは存在しないだろうということです。

このシリーズで、ずっと述べてきましたように、ヴァイオリンの演奏家、指導者なら楽器に詳しいはずだと思っても、必ずしも、演奏の専門家=楽器選定の専門家 というわけではありません。演奏は上手にこなせても、上手に弾き方を教えられても、ヴァイオリン(弦楽器)をモノとして判断する能力があるとは限らないのです。

つまり、そういう方たちと比較しても、ご自分の感性に優る相談相手はいないということなのです。

むしろ、人と相談することによって貴方の正常な判断能力、感性が混乱を来してしまう可能性の方が強いのです。

それでも、どうしても人に相談したい方、 もう、既に相談してしまった方もいらっしゃるでしょう。 今回はそのような方たちに贈るお話しです。

ここでは、自分ではまずまずだと思っている楽器を人に見せて相談した時、相手から必ず言われる言葉、それを採り上げてみましょう。
その言葉の「解釈」を間違うといつまでも迷走飛行を続けなくてはならなくなります。

◆ もうすこし探してみた方がいいんじゃない

「きっと、探せばもっと良い楽器があるよ。」 というのは希望的ともとれる、けれども実はすごく無責任な発言です。 いったいあとどれだけ、どこで探したら、今より良い楽器が 見つかるというのでしょうか? 楽器は皆1台1台違うのですから、世界中の楽器を探しまわった末にどれが1番か結論を出さなければなりません。
確かにもっと良い楽器が世界中のどこかにはあるかもしれません。 しかし、無いかもしれません。それは誰にもわかりません。 もっと探すことで確かにもっと良い楽器がみつかるかもしれない。 しかし、それはあくまで、「かもしれない」なのです。
あてもなく探し回っているうちに、今目の前にある、「そこそこ気に入っている楽器」をも失うリスクもあるのだということを忘れてはなりません。

 

◆ その楽器店はあまり良い評判を聞かないよ

偽物を売りつけられる、価格が品質の割に高い、 店の経営が危ない、ラベルの貼り替えをするetc
弦楽器店にまつわる良からぬ噂には全く事欠きません。 でも、こういった話はよくよく聞くと、 ほとんどが、言っている本人が直接見たり体験した話ではないことであったりします。
実は人づてに聞いただけであったり、別の楽器店からの情報(誹謗中傷)であったりなのです。 そんな情報にまで真面目に耳を傾けていたら、楽器などいつまでたっても選べません。

百歩譲って、楽器を選んだ弦楽器店がどんなに評判が悪くとも、ご自分が選んだ楽器自体が良いものであれば、 全く問題は無いのではないでしょうか。(人間とは違って)楽器は決して嘘をつきません。一切の雑音を排除し、目の前の楽器だけを見つめることこそが大切なのです。

◆ 今は良く鳴ってると思うけれどすぐに鳴らなくなるんじゃない

「最初から鳴る楽器は、鳴らなくなってしまう。 楽器は最初鳴らないぐらいのを選んで、鳴らし込んでいくのが本当なのだ。」 とおっしゃる方がいらっしゃいます。

もしそうだ とすると、「楽器選びとはまず最初は鳴らない楽器を選ぶこと」であるという、何ともおかしな話になってしまういうことになります。

毎日何時間も弾き続けることが可能ではない、趣味で弾かれる方に とって、鳴らない楽器を鳴るようにするまでにどれだけの日数がかかるのでしょうか? また、鳴らない楽器は必ず鳴るようになるのでしょうか?
個々の楽器について、これらを明確に答えられる人はまずいないでしょう。
板の厚みが薄いと鳴らなくなるという人もいます。 実は、板の厚みというものは、理想的な数値が決っている訳ではありません。 使う材料によって、厚さは微妙に違いますし、逆に、違えなくては良く響く楽器は作り出せないのです。
また、どこをどのくらいの厚さで削るかという板全体の厚みの分布が理想的な振動を決めます。f字孔のところから見える厚みだけを見て板が厚い、薄いということを判断するのはあまりにも早計です。

確かに板が極端に薄い楽器は、強く弾いたときに、音が前に出ない、 音がこもるなどの症状が出ます。 ですから、このような楽器については 鳴らしやすいからといって選ばない方が賢明です。
一方、板が厚いと楽器全体が共鳴しなくなり、低域のエネルギー感が失われます。 でも板が厚いから安心、弾き込めば鳴るようになるというような単純なものでは決してありません。

長くなりましたのでこの辺でいったん打ち切りますが、 次回も引き続き、 「相談したときによく聞く、真に受けてはいけないアドヴァイス」 をお送りしたいと思います。

次の更新は来月初旬を予定しております。 どうぞご期待ください。