価格:¥ 4,400,000(税込)



ここ近年イタリアモダンヴァイオリンの値段は随分と高くなってしまいました。そのために、楽器をお探しの方はご予算を上方修正された方、逆に販売価格が上がりすぎてご購入を見合わせた方も多いのではないでしょうか。
でも、楽器の値段が上がればその分必ず音が良くなるかというと、意外にそういうものでもないとお思いの方が多いのではないでしょうか。いや、そういう方は実態を良く知る方であってまだまだ少数派なのかもしれません。大多数の方は、まだまだ、もっと高い価格帯の楽器を探せば、音が良くなるに違いないと思っているのかもしれません。
まことに申し訳ないのですが 『価格と音(性能)が比例しないことがある』 のが手工弦楽器の世界なのです。もちろん鑑定書や証明書もどんな権威あるものであっても音を保証するものではありません。
イタリアモダンの良さは、密度のある充実した音、強く引き締まった音だと思います。しかし鳴らしにくい楽器や実際に鳴らない楽器が多いことも事実です。
この鳴らしにくさや鳴らないという悩みは、名工の、そして間違いの無い本物の楽器にも実際起こり得ます。それは多くのモダンイタリーのヴァイオリンの持つ特徴、すなわち板が厚い、ニスが厚いということに起因しているからです。
でも、名工のそして間違いの無い本物ということになりますと、音の良し悪しは関係なく販売価格だけはとてつもなく高価になってしまいます。これだけは確実に言えます。
そのような高価なものが鳴らない、鳴らしにくい、良い音がしないなどということは、普通に考えますと有るまじきことなのですが、手工弦楽器の世界ではしばしば起こってしまうのです。
私がこの仕事を始める前、一人の弦楽器愛好家だった頃、ある弦楽器店で Gaetano Sgarabotto のヴァイオリンを見たことがありました。まるで新品のように見えるほどコンディション良好のその楽器は、遺族によって蔵出しされた楽器の中の1台で、併せて出版されたSgarabotto親子の書籍の中にも掲載されているという、まずは間違いの無い本物と言って良い楽器でした。 価格はその当時、1990年頃で600~650万円だったように記憶しております。
ところがその楽器が全く鳴りません。同席していた友人は、店を出た後ス○キ(日本の代表的量産メーカー)の方がまだマシなんじゃないの言っておりましたが本当にそのような感じでした。音色や音の好み云々以前に、楽器が全く鳴ってくれないのです。(もちろん、お店の方は落ち着き払った態度で「弾き込めば必ず鳴るようになります」とおっしゃっておられましたが・・・)
イタリア、モダンの著名な製作家、そしてまず間違いの無い本物、完璧なコンディション、価格が高価なものであっても音は大したことがないということがあるのだと大変驚きました。
その時は、もちろん、自分が弦楽器商になるとは思ってもいなかったわけですが、今思うと現在の仕事に繋がる貴重な事実を知る体験をしていたのだなあと思います。
今回ご案内の楽器 Giuliettiは年代はそれほど古くないし、有名な製作家の楽器でもありません。(それが故に実は価格が安く抑えられている訳なのですが・・・)
しかし、 つくり、そして性能(音響特性)は申し分の無い素晴らしいものです。
是非、モダンイタリアの有名製作家 1,000円~2,000万円 クラスの楽器と何がどう違うのか比べてみていただきたいと思います。1,000円~2,000万円クラスのヴァイオリンをお求めになるのはそれからでも遅くありません。そしてその後に、 名前だけではなく、本当に1,000円~2,000万円 のお値段に値する真の実力を持った楽器をしっかりとお探しいただきたいと思います。
よく「裏板から鳴らすように弾きなさい」とか「裏板が鳴ってきた」というような表現で、楽器の鳴りや鳴らす感覚を表すことがありますが、その裏板が鳴る感覚がいったいどのようなものなのかをこの楽器は教えてくれるに違いありません。