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ジャン=ジャック・カントロフ& 上田晴子|ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ

カントロフ・ベートーヴェン・ヴァイオリンソナタ
ALCD-7143

ベートーヴェン  ヴァイオリン・ソナタ集

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第3番 Op.12-3
ヴァイオリン・ソナタ第4番 Op.23
ヴァイオリン・ソナタ第5番 Op.24 《春》

ヴァイオリン:ジャン=ジャック・カントロフ     ピアノ:上田晴子  録音:2008年 11月

聴いていて様々な発見があり、大変面白く聴いたCDです。クレーメル、アルゲリッチの全集CDもそういった意味では色々な仕掛けがあって非常に興味深い演奏でしたが、このカントロフ、上田盤もおそらくそれに匹敵する(まだ全集が完結してはいませんが)ものになるのではないかと思います。

カントロフについてはもう何も申し上げることが無いくらい有名なヴァイオリニストでありますが、このCDの共演者である上田晴子も室内楽の第一人者として演奏にそして指導者として大活躍している方です。
ソナタの場合はピアニストで決まると良く言われますが、ピアノの弾き方で曲の印象が相当変わってしまうので、誰に弾いて貰うかは極めて重要なのです。ですから、良くある、伴奏者などという呼び方は大変ピアニストに失礼ですね。共演者と言わないと。

どの曲のどの部分を聴いても、テンポやダイナミクスそして音色など細部まで考え抜かれて弾かれていることがわかります。それが一番顕著にわかるのは第5番の第三楽章のテンポ設定ではないでしょうか。聴いてみると普通演奏されるテンポより随分遅く感じます。
その理由については上田晴子自身が、ライナーノーツに「元々のスケッチを見るとメヌエットのようになるリズムで考えられていた事、8分の3ではなく4分の3拍子である事を考えた上で、カントロフが、4分の3で弾けば相当速いアレグロ・モルトになる、という理由で、このテンポを選んだ。」と種明かしをしています。
その他冒頭に書きましたようにあらゆるところで唸らされるような発見があるのですが、それが決して恣意的なものではなく、説得力を持って聴こえてくるというところが、やはりこのコンビならではではないでしょうか。にわかにデュオを組んだような二人ではこうはいきません。全集の完結が待ち遠しいですね。

CDに特に使用楽器についての記載はありませんが、カントロフは日頃1699年製の Stradivariを使用しているので、この録音もおそらくそのヴァイオリンでされていると想像されます。ふくよかで軽やかなヴァイオリンの響きが印象的です。