ギヨーム・ルクー(1870年ベルギー生まれ)という作曲家をご存知でしょうか?
ベルギー生まれの作曲家と言ってすぐ思い浮かぶのはフランクですが、ルクーはそのフランクの最後の弟子なのです。
代表作はこのヴァイオリンソナタ。と言っても、ルクーは24歳という若さで亡くなってしまったので、断片などを除くと作品数は極端に少なく、そのせいで彼の名が広く知られていないのではないかと思います。
ところで、フランクのヴァイオリンソナタはイザイの結婚祝いにフランクが献呈したものなのですが、このルクーのヴァイオリンソナタは、そのイザイがルクーの才能を見込んでわざわざ作曲を依頼したものなのです。初演はもちろんイザイ。しかしその初演の1年後ルクーは病死してしまいます。
演奏会でもっと取り上げられたらとも思う佳曲なのですが、フランクのソナタほどは劇的ではないので、演奏効果という点で敬遠されてしまうのでしょうか、CDすらあまり数が無いという寂しい状況です。
演奏は同じくベルギー出身の巨匠、アルテュール・グリュミオーの録音がベスト。
ここでご紹介しているCDは輸入盤(3枚組)ですが、幸い昨年11月に「アルテュール・グリュミオーの芸術」UCCD-9840として国内で再発売されました。
実は同曲には1973年のステレオ録音UCCD-9839もあるのですが、私のお薦めは断然この1955年のモノラル録音の方です。モノラルながらも若かりしグリュミオーの艶のある輝かしい音が良く捉えられています。この曲の持つ芳しい香りのようなものは、どういうわけだか73年の録音では味わえないような気がいたします。
「アルテュール・グリュミオーの芸術」、お値段も1枚1,000円と大変お手頃ですので、買い忘れていたグリュミオーのCDはこの際に揃えておきたいものです。
因みに私の持っている輸入盤の収録曲は
ドビュッシー ソナタ
ルクー ソナタ
シューベルト ソナチネ、ソナタ
クライスラー 小品
タルティーニ 悪魔のトリル
コレルリ ソナタ
ヴィターリ シャコンヌ
ヴェラチーニ ソナタ
パガニーニ 〈こんなに胸騒ぎが〉による序奏と変奏曲
同 魔女たちの踊り
となっています。(ピアノ:リッカルド・カスタニョーネ 録音:1955年、56年、58年)
グリュミオーと言えば、ストラド弾きの代表みたいな演奏家ですが、始めはストラディヴァリウス 1715年製“ティティアン”、後に1727年製“エックス・ジェネラル・デュポン”を使用していました。ただ、師事していた豊田弓乃氏に因れば、彼はかなりの楽器コレクターでもありフランス製のヴァイオリンも数多く所有していたようです。