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ナタン・ミルシテイン・最後のリサイタル

ナタン・ミルシテイン最後のリサイタル

WPCS 4373

ミルシティン最後のリサイタル

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番 「クロイツェル」
バッハ:シャコンヌ(無伴奏パルティータ第2番より)
ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ イ長調 Op.1-3
バッハ:アレグロ・アッサイ(無伴奏ソナタ第3番より)
サラサーテ:序奏とタランテラ
プロコフィエフ/ミルシテイン:「年老いた祖母の物語」より
チャイコフスキー/ミルシテイン:マリアのアリア(歌劇「マゼッパ」より)
パガニーニ:カプリース13番
リスト/ミルシテイン:コンソレーション第3番

ヴァイオリン:ナタン・ミルシテイン     ピアノ:ジョルジュ・プリュデルマシェール
録音:1986年 6月17日 ストックホルム ベルワルド・ホール

これはロシア生まれのユダヤ系ヴァイオリニスト、ナタン・ミルシテイン(1903-1992)の最後のヴァイオリン・リサイタルの録音です。当時ミルシテインは
82歳でしたが、6月16日の朝、左手の人差し指の痛み、こわばりに気付いたそうです。しかし、急遽フィンガリングを変え、予定されたプログラム通り、リサイタルに臨みました。
そんなすごい離れ業が可能だったのは、同じことの繰り返しからくる音楽の淀みのようなものを避けるために、しょっちゅうフィンガリングを変えて弾くことを普段から心掛けていたためで、この時もそんな日々の鍛錬が役に立ったのだそうです。

何かで読んだ記憶があるのですが、ミルシテインはリサイタルには必ずバッハとパガニーニの無伴奏曲を入れるようにしているそうです。それはバッハの無伴奏パルティータ&ソナタとパガニーニのカプリースはヴァイオリニストがずっと一生取り組み続けなければいけない楽曲であることを示しているようですね。

このリサイタルの開催にあたっては、ナタン・ミルシテインのDVD80歳代のヴァイオリン奏者として、もはや史上に類をみない域にまで達した、ミルシテインの演奏を記録に残しておこうという動きもあり、実はテレビカメラも回していました。
そのリサイタル映像の一部も取り込んで作られたドキュメンタリーが『Nathan Milstein in Portrait』というタイトルでDVD化されています。リサイタルの演奏以外にはプライベートレッスンやピンカス・ズッカーマンとの談笑風景などもあり、極めて貴重な映像と言えますが、日本語字幕が無いのが残念です。
リサイタルの映像を見て驚くのは、とても82歳とは思えぬ、かくしゃくとした演奏ぶり。例えば「序奏とタランテラ」の後半部分速いパッセージが続く箇所も左手の指が全く上がらない、バタつかないのです。素早い動きと言うよりは、まるで指が動かずに止まっているかのように見えます。これは次の指の準備を素早く行い、実際の動きを最小限に抑えているからに他ならないと思います。ましてこれが指の故障をかばっての演奏だったとは到底信じられませんね。

雑誌 サラサーテところでミルシテインはStradivari 1716 “Goldman”を愛奏していました。このCDでもおそらく(上記DVDからも伺えますが)その楽器を弾いているはずです。
このヴァイオリンはミルシテインの二番目の妻と娘の名をとって、「マリア・テレサ」と呼ばれることもあります。

まさにストラディヴァリ黄金期の素晴らしい作品ですが、このヴァイオリンの写真は雑誌『サラサーテ』Vol.45(2012/4)で見ることができます。
ミルシテインのこのStradevariは2006年まで遺族が所有していましたが、その後ロンドンのチャールズ・ベアを経て、現在は個人の所有物となっているとのことです。
でも、そんな黄金期の名器は眠らせておくのではなく、是非演奏会でまたその素晴らしい音を聴かせてもらいたいものですね。