この素晴らしい裏板の例(販売済み)をご覧ください
ヴァイオリンの板と製作
表板は軟らかい材質のスプルースと呼ばれる松科の木で作られ、裏板には硬い木である楓が用いられます。
残念ながら松も楓も日本のものはヴァイオリンの製作には適しません。
スプルースはイタリア、ドイツ、楓はユーゴスラヴィアのものが良いとされていましたが、
ユーゴの楓は随分と価格が高くなってしまいました。
現在、裏表とも、最も多く使われるのはドイツ産のものでしょう。
表板は必ず2枚板でつくられます。
その訳は左右対称にすることで、音響的に均一になるからです。
一方、裏板は2枚で作る場合と1枚で作られる場合とどちらもあります。
どちらが音響学的に優れるかは特に無いようです。
さて、表板は木目が縦に走っています。これは年輪です。
色の濃い、細くて堅い部分を冬目、巾の広い白くて柔らかい部分を夏目といいます。
裏板の場合は木目の目立つものとはっきりしないものとがあります。
横に走っている木目は実は年輪ではありません。
非常に判りにくいのですが、年輪は縦に走っているのです。
木目の模様のことを杢といい、横にはっきりと出るので虎杢と呼んだりもします。
その他、鳥目状の模様が出るものもあり珍重されています。
杢が出る理由は楓の幹がぐねぐねと曲がっていて、
しかも成長が遅く不規則に育つことで繊維が複雑に交錯するからだと言われております。
杢のはっきりした材料は数が少ないため大変高価になります。
音響学的には、杢の有無、杢の出方によって音の優位差は無いとされています。
ストラディヴァリウスも若い時は貧乏だったため、杢のはっきりした材料を購入することが出来ず、
模様の出ない裏板の楽器を何台も作っています。
しかし、それらも銘器として後世に名を残しています。
ただ、ヴァイオリンは人が作るものですから、奇麗な材料から霊感を得て、
素晴らしい作品が出来ることは有るかもしれません。
また、もっと現実的な話として、高い材料を目の前にして、
いつもに増して、慎重に、丁寧に製作するかもしれません。
その結果良い楽器が生まれることはないとは言えないでしょう。