TV番組「炎のレッスン-天才ヴァイオリニスト・樫本大進」 (指導者について)

炎のレッスン-天才ヴァイオリニスト・樫本大進 はご覧になりましたか?

衛星放送だったので、まだ、ご覧になっていないクラシックファンの方も 多いことと思います。
実は8月12日(水)23:25より、今度はNHK総合TVで放映されます。 見逃した方は必見です。

内容は、ご覧になった方には不要だと思いますが、樫本大進がシベリウスのVn協奏曲を初めて舞台にのせるために行った 10か月間の練習をカメラで追ったものです。

ここで重要な役割を演じているのがザハール・ブロン教授です。
前回のCDプレゼントの際にご紹介しておりますので、ご記憶の方も いらっしゃることと思いますが、最近、レーピンやヴェンゲーロフなどの 「怪物」とも呼べる、素晴らしいヴァイオリニストを世に送り出したことで、 注目されている教師です。

彼の演奏家としての腕前は、数少ないCDを通してしか知ることができませんでしたが、今回、レッスンを通して、彼は優れた教師であると同時に間違いなく卓越した演奏家であることも示してくれました。
ところで教師には次のようなタイプがいるように思います

1)自らはほとんど楽器を弾かず、楽曲の分析を徹底的に行うタイプ

2)自ら弾いて、お手本を示すことができるタイプ

3)優れた演奏家であっても、上手くその技術を伝えられないタイプ

4)演奏家としては活躍しなかったが教えることが上手いタイプ

また、別の分類を試みると

A)自分の考えを押し付けるタイプ

B)自分で全てを決めずに、先ず生徒に考えさせるタイプ

に分けられると思います。

ですから二つの分析を総合して、例えば1-A [楽器はろくに弾かずに、譜面の分析ばかりして、指使いや、ボーイングも 自分の言う通りに弾かないと機嫌が悪いタイプ] などのように、世の中のヴァイオリン教師は区分できるのではないでしょうか。
もちろんこの分類にはどこにも属さない、「演奏家としても活躍できず、 仕方なく生徒を教えているが、教えることも下手で情熱も無い」のような 先生もいらっしゃるのでしょうが、ここではそのような方には触れません。

ブロン教授は間違いなく2)のタイプです。 彼の出す音は実に強力で、音楽は実にスケールの大きいものです。 樫本君も頑張っていますが、ブロン教授の前では、一回りも二回りも、 まだスケールが小さいように聞こえてしまいます。
ブロンが樫本に繰り返し注意していたのは、ヴィヴラートの手を抜かないこと ヴィヴラートの種類を多くすることでした。 それこそが、ブロンのような生命力のある音を産み出す原動力であるのでしょう。

下の分類の方は、TV中ではA)のように一見は見えました。 しかし、これはこの編集された番組だけでは何とも判断はつきません。 むしろ、愛弟子のコンサートには異国から駆けつけるなど、弟子に対して 並々ならぬ愛情が感じられますので、実態はB)のような気が私はします。

ともあれ、優れた教師とは自分の修得した技術を普遍化して、それを個々の生徒の レベル、個性に合わせて伝えることができる人物ではないかと考えます。
その為には、音楽の知識はもちろんの事、それ以外、美術や歴史などにも精通し 何より人生について沢山の引き出しを持つ必要があるのではないでしょうか。
ある高名な教師は、心理学をも学んでいるというの話も聞いた事があります。確かに人を相手にする商売なのですから、プロフェッショナルとしては当然といえば当然でしょう。

この番組、樫本大進の天才ぶりはもちろん目玉なのですが、 教師というもののあり方について考えさせられてしまいました。 そして、樫本大進は何と幸せな奴なのかと思ったのです。 もちろん、「みんながみんな樫本君みたいだったら、教える方は楽なんだけどね~」 という先生方のつぶやきが聞こえてきそうなのも承知の上ですけれど・・・・・。

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