弦楽器、弓に関する基礎知識

第6回目も弦楽器の弓に関する話題です。

弓の選び方をお話しする予定でしたが、その前に 弓の基礎知識からお話ししたほうが良さそうです。

◆弓についての基礎的な知識

近代的な弓を作り出したのはパリのトルテ(Tourte) です。 主な改良点は

1)スティックの反りを逆にした。

2)旧型の弓では様々な材質の木が 使われていたのをフェルナンブーコに 改めた。

3)フェルールおよび真珠貝で作ったスライドライナー のついたフロッグを考案した。

4)時計職人の経験を生かし、フロッグ (毛箱)を精密、かつ美しいものに 改良した。

でした。 これによって、大きな音量や、多彩な奏法が可能になったのです。

◆弓の材料についての知識

【本体】

スティックの材料にはアイアンウッドやスネークウッド等 使用されますが、いずれも弾性の点でフェルナンブーコには かないません。 フェルナンブーコはブラジル原産のマメ科の高木。 組織が緻密で弾性と強度を兼ね備えていることから 高級弓には必ず使用されています。
実は、染料として、フェルナンブーコは用いられており。 弓作りの中心地ミルクールは、織物の産地リヨンの近くだったので、 この材料が手に入り易かったと考えられます。
現在ではフェルナンブーコの原木はブラジルでは輸出禁止となっており 半製品の素材だけが送り出されています。 そのため、良い素材を選び分けるのが困難になってきて、 これが最高級の材料で作られたオールドボウが珍重され、 値上がりする要因となっています。

【フロッグ】

フロッグ(毛箱)には黒檀、象牙、鼈甲などが使用されます。
装飾的には鼈甲や象牙が珍重されますが、 機能的に黒檀は鼈甲や象牙に劣るものでは決してありません。
普及品にはプラスチックでできているものもありますが、 耐久性の点で避けたいものです。
象牙、鼈甲とも現在では輸入禁止品目となっています。

【弓毛】

弓の毛はご承知のように、馬の尻尾の毛を使用しておりますが、 白馬の毛に限られております。
モンゴルやカナダでとれます。

【スクリュー】

弓毛の張力を調整する部分です。 雄ネジは通常スチールで作られます。 そこにボタンと呼ばれるつまみが付きます。 ボタンは金属の輪をかぶせたり、その端に 真珠貝が埋め込まれたりします。 雌ネジの部分は真鍮でできています。

【フェルール】

弓毛を止める半月形の輪のことです。 洋銀や銀、金などで作られます。 美観上、ボタンやヒール・プレートと材質は合わせられます。

【ラッピング】

弓を保持する際に人差し指と親指の当たる箇所が摩擦のために 擦り減らないように防ぐもので、銀糸、銀メッキの銅線、 銀線、金線、鯨のひげなどがあります。
鯨のひげも輸入禁止になっていますので、現在では プラスチックのイミテーションが使われます。 親指の当たる部分には、トカゲ、牛、ヤギ、ヘビなどの皮が 巻かれます。

【真珠貝】

フロッグのスライドや両側のアイには真珠貝や 鮑が用いられます。

【チップ】

弓の先の三角形の部分です。 これは昔は象牙が使用されましたが、現在では、牛の骨が使用されます。 イギリスの弓などでは銀を使っているものもあります。

こう見て参りますと、「弓」というものは、ブラジルの貴重な木材に モンゴル産の馬の毛を合わせ、鼈甲、または象牙を贅沢に使用し、 仕上げはトカゲや真珠貝、銀で飾り付けるというように、 まさに山海の珍味盛り合わせ状態であることが 良くお分かりになったと思います。

何の変哲も無い棒切れですがあなたの弓もこんな苦労をして 出来てきているのです。 そう思うと何となく愛着が増すものです。 次回(10月15日ごろ)こそは、良い弓の選び方をお話ししましょう。

戻る