サルヴァトーレ・アッカルド|J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全集

アッカルド「J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全集」

fone /061 SACD
J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全集

・無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番ト短調BWV.1001
・無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番ロ短調BWV.1002
・無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番イ短調BWV.1003
・無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番二短調BWV.1004
・無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番ハ長調BWV.1005
・無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調BWV.1006

ヴァイオリン:サルヴァトーレ・アッカルド
使用楽器:Stradivari 1727 “Hart”(ソナタ第1番、第2番、第3番、パルティータ第3番)
G.P.Maggini 1620“GiorgioⅢ”(パルティータ第1番、第2番)
録音:2007年9月

アッカルドは1976年にこのバッハの無伴奏全曲を録音していますから、30年以上経っての再録音ということになります。
演奏はトレンド化しているピリオド奏法を取り入れたものではありません。しかし、ヴィブラートの幅などは抑えられたものとなっているように思いますので、巨匠風、大家風の演奏とも少し違います。重音の奏法、速い箇所などにやや粗さを感じなくもありませんが、ピリオド的な演奏に比べ、楽器を鳴らし切り、ダイナミックに弾き切った豪快なバッハと言えるかと思います。
実はこのCDで注目すべき点は録音に使用された楽器にあります。
Stradivari “Hart”は過去のブログ、ストラディヴァリ4挺による四季 でも触れました通り、フランチェスカッティから譲り受けた楽器でアッカルドの楽器としてはもはや馴染み深いものですが、もう一台クレジットされている楽器 Maggini 1620 “GiorgioⅢ” は実に珍しく、興味深いものです。私はここに目がくぎ付けになりました。

ブレシアのヴァイオリン製作者 書籍試しに、左の画像の書籍でこの楽器が載っていないか調べましたところ・・・・ありました。見つけました。

この書籍は、2007年にブレシア派の製作家の楽器を集めた展示会 が行われたのですが、その展示会に出品された楽器をまとめたものです。

左の画像がそのMaggini 1620“GiorgioⅢ”になります。Maggini 1620“GiorgioⅢ”
どのような経緯で、アッカルドがこの楽器を弾くことになったのか詳細はわかりませんが、とにかくこのStradivariよりも更に100年も古い楽器の音がCD録音として記録され、残されたことは凄い価値のあることだと私は思います。

録音は教会で行われたのでしょうか、やや残響過多と思われます。かなりはっきりしたエコーが戻ってきますので、速い動きの時には直接音にまとわりつくような感すらあります。ですから、ディテールが滲んでしまい、楽器の聴き比べにはあまり向かない録音のように思いますが、それでも StradivariとMagginiの違いは歴然としていました。
Stradivariの軽やかさ華やかさに比べ、敢えて煌びやかさを抑え、限りない底力を見せるMagginiの音は実に逞しく、魅力的でした。1620年という古い年代の楽器がこのような強力な音を出すことに私は驚きを禁じ得ませんでした。
実に贅沢な話ですが、このMagginiを聴いた後にStradivariを聴くと、フランチェスカッティ所有の名器もどこか華奢に聴こえてしまうくらいですね。
ともかく、Magginiの音、この1620年の楽器が出す、信じられないくらいのエネルギッシュな音を一度聴いてみてください。