世界の名ヴァイオリニスト| MOSTLY CLASSIC|Vol.180

MOSTLY CLASSIC 世界の名ヴァイオリニスト

モーストリー・クラシック
2012年 5月号 vol.180
産経新聞出版

ヴァイオリニストに格付けをするというのはいかがなものかとは思いますが、往年の名手、現役の名演奏家の名前や経歴を知るには格好の書籍だとは思います。これを読んで聴いてみたくなる演奏家もいると思います。
また、“名教師と歴史的奏者の伝承の跡”、“ヴァイオリンの演奏流派をめぐって”、“ヴァイオリニストと銘器の複雑な関係”、“コンサートマスターの名ヴァイオリニスト”等々、当ブログに関連するような話題も載っておりますので、解説書、参考書としても役に立ちそうです。

ざっと目を通しただけで、まだ全部は読み切れてはいませんが、私は横溝亮一の『ヨゼフ・シゲティの思い出』という文章中のシゲティの言葉が大変心に残りました。

「うまく弾くのが音楽じゃない。深く思索して、その音楽の魂を引きずり出すのだ。音楽はヨーロッパの哲学なんだよ。日本では、ベートーヴェンがどんな思想の持ち主だったか、それが彼の音楽にどう反映されているか、そういうことを勉強していますか?」

ここを読んで、私は名教師とされる、ある日本人演奏家のマスタークラスを思い出しました。そこでは、生徒に対して、音を大きくとか小さくとか、テンポを速くとか遅くとか、コンクールで聴き映えがするであろう効果的な演奏法しか教えていませんでした。そこには思想のかけらもなく、まるでオーディオ装置のトーンコントロールやボリュームをいじくって、出ているヴァイオリンの音だけを調整しているように見えました。もちろんそこには思索のかけらもありませんでした。