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ヴィエニアフスキ ヴァイオリン作品集

ヴィエニアフスキ ヴァイオリン作品集 CD

ACCORD /ACD 106-2
ヴィエニアフスキ ヴァイオリン作品集

 ・ポーゼンの思い出 op.3
・クヤヴィアク(お気に入りのマズルカ) イ短調
・華麗なるポロネーズ第1番 ニ長調 op.4
・モスクワの思い出 op.6
・カプリース=ワルツ ホ長調 op.7
・言葉のないロマンスと優美なロンド ニ短調 op.9
・新しい手法(無伴奏ヴァイオリンのためのエチュード・カプリース) op.10
・ロシアの謝肉祭 op.11
・2つのサロン用マズルカ op.12
-牧歌 (La champetre) ニ長調
-ポーランドの歌 (Chanson polonaise) ト短調
・スケルツォ=タランテラ ト短調 op.16
・創作主題による変奏曲 op.15
・伝説曲 op.17
・2つのヴァイオリンのためのエチュード=カプリース op.18
・2つの性格的マズルカ op.19
-オベルタス (Obertas) ト長調
-旅芸人 (Le Menetier) ニ長調
・グノーの『ファウスト』による華麗な幻想曲 op.20
・華麗なるポロネーズ第2番 イ短調 op.21
・ジーグ ホ短調 op.23

ヴァイオリン:バルトウォミエイ・ニジョウ、ピオトル・プワフネル
コンスタンティ・アンジェイ・クルカ、ダニエル・スタブラヴァ
ピアノ:アンジェイ・タタルスキ、エルジビエタ・スタブラヴァ

録音:2001年 3月、6月、7月

コンサートのアンコール・ピースとして、またはコンクールの課題曲あるいは自由曲などで《スケルツォ=タランテラ》、《華麗なるポロネーズ》、《創作主題による変奏曲》、《モスクワの思い出》などのヴィエニアフスキ作品は良く演奏されますね。ですから、これらの曲は皆さんどこかで聴かれたことがあると思います。このCDはそれらの良く知られた曲に加え、あまり演奏されない作品も併せて収録してくれていますから学習者、コレクターも大変重宝すると思います。
それにプラスしてこのCDの特徴は、演奏がポーランド出身のアーティストで固められていることです。本場モノが必ずしも良いとは限りませんが、このCDの場合、一聴してその違い、良さは感じられると思います。

ヘンリク・ヴィエニアフスキは1835年ポーランドの地方都市ルブリンの旧市街に外科医の二男として生まれました。幼年期からヴァイオリンに強い関心を示し最初は地元でS.セルヴァチニスキに師事したが、驚異的な成長を遂げ、パリ音楽院に8歳で例外的に入学を許可されます。
そして12歳のときにはペテルスブルク、パリなど各地を弟のユーゼフと共に演奏旅行しました。
その後パリ音楽院に再入学して作曲を学び、コンポザー・ヴァイオリニストとして活躍しました。
彼はその生涯の大部分を各国に演奏旅行していますが、当時ヨーロッパ音楽の中心地の1つだったペテルスブルクとは特に関係が深く、当代の名匠たちの集っている中で、若いヴィエニアフスキが「皇帝陛下のソリスト」という名誉ある称号を得ています。
彼の演奏は異常なほどの情熱と力感に溢れ、しかも憂愁味があり、輝くばかりの名人芸と結びついた全く比類のないものだったとのことですが、あまりの多忙さは彼の心臓を痛め、1880年3月、モスクワで死を迎えました。
演奏回数の多さは常軌を逸したもので、1872年を例に挙げるとアントン・ルービンシュタイン(アルトゥールとは別人)と共演したアメリカでの演奏旅行だけでも、8か月で215回。ニューヨークだけでも50回に及んだといいます。
ヴィエニアフスキはまた優れた教育者でもあり、ブリュッセル音楽院でウジェーヌ・イザイを教えたことはあまりにも有名です。

さて、このCDですがクルカやスタブラヴァのベテラン組と、ニジョウ、プワフネル組がそれぞれ分担して演奏していますが、どれも甲乙をつけがたい名演と言えるでしょう。

日本の学生がコンクール等で《創作主題による変奏曲》や《モスクワの思い出 》等の作品を聴くと、いつも聴き始めは皆良く弾けるなあと感心するのですが、聴いているうちにだんだん(大変失礼ですが)飽きてきてしまいます。
それがなぜだったのか、このCDを聴くと良くわかります。ヴィエニアフスキの書いた音楽を再現するには、まずは正確な技巧が必要なのですが、上記、ヴィエニアフスキの演奏の特徴で書いた、情熱と力感そして憂愁味が演奏に感じられなくてはダメなのです。
もちろんきちんと正確に弾けるのは素晴らしいことなのですが、日本の学生のヴィエニアフスキの演奏の多くは、単なる技巧のオンパレードになってしまっていて、そこに感情や情熱つまり“うた”を感じることがあまりありません。場合によっては曲を自分の技巧をひけらかす手段としか考えていないような演奏もあります。そういった演奏を聴くと、ワンパターンでしつこいだけの曲にしか聴こえて来ません。それでは聴き進むうちに飽きてきてしまっても仕方がありません
ね。
このCDで聴けるのは、そういった技巧のオンパレードではなく、曲に秘められた烈しい情念のようなものの吐露です。《華麗なる○○》というよ
うな題名が付いていようとも、決して輝かしいだけの表面的な曲ではありません。曲の底辺にはどこか仄暗い民族の“うた”が流れているのだと思います。それをえぐり出してきているのでこのCDの演奏は心を打つのだと私は思います。

私なりのこのCDの白眉は《グノーの『ファウスト』による華麗な幻想曲》です。
実は私はこの曲がとても苦手で、何度聴いても、なんてつまらない曲なのだろう、どう考えても駄作としか言いようがないなとずっと思っていたのですが、この演奏を聴いてその考えが覆されました。初めて曲を理解しその良さを納得できたように思います。

ヴァイオリン学習者はもちろんのこと、ヴァイオリン音楽を観賞する方々にも広くお薦めしたいCDです。