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バロック・ヴァイオリン|寺神戸 亮|モーツァルト ヴァイオリン・ソナタ集

寺神戸亮 CD
COCQ-38

モーツァルト:
ヴァイオリン・ソナタ第25番 ト長調 K.301( Givanni Grancino ca.1690使用)
ヴァイオリン・ソナタ第28番 ホ短調 K.304( Givanni Grancino ca.1690使用)
ヴァイオリン・ソナタ第29番 イ長調 K.305(Carlo Ferdinando Landolfi 1772使用)
ヴァイオリン・ソナタ第30番 ニ長調 K.306(Carlo Ferdinando Landolfi 1772使用)

バロック・ヴァイオリン:寺神戸 亮
フォルテピアノ:ボヤン・ヴォデニチャロフ(1788年製シュタインのコピー楽器使用)
録音:2008年12月

本日はいわゆる古楽器とかピリオド楽器と言われるものを使った演奏CDのご紹介です。
私はピリオド楽器や古楽器の音色や独特の奏法がどうしても好きになれなかったので、これまで積極的にCDの蒐集はしておりませんでした。
しかし、最近はバッハの無伴奏ソナタ&パルティータを演奏する際に、現代楽器でも古楽器奏法を取り入れたアプローチをする演奏家が増えてきました。それで、研究のために、以前のようには毛嫌いせずにピリオド楽器の演奏も聴くようになってきたというところです。そうしていると、どうしてだかわからないのですが、今まで感じていたような違和感を感じない古楽器演奏が存在することに気がつきました。本日ご紹介するCDもそういった演奏の中の1枚ということです。

寺神戸 亮(てらかど りょう)1961年ボリビア生まれ。
桐朋学園大学でヴァイオリンを久保田良作、室内楽を三善晃、安田謙一郎らに師事。在学中の1983年に日本音楽コンクールで第3位入賞。1984年、同大学を首席で卒業すると同時に東京フィルハーモニー交響楽団にコンサートマスターとして入団しました。
しかし、かねてから興味を持っていたオリジナル楽器によるバロック音楽の演奏に専念するため、同楽団を1986年に休団(のちに退団)した。オランダのハーグ王立音楽院に留学し、シギスヴァルト・クイケンのもとで研鑽を積みました。同院在学中から演奏活動を始めると、直ちにその才能は広く認められるところとなり、ヨーロッパ各地の古楽器アンサンブルやオーケストラ等でコンサートマスターを務めました。またソリストとしても協奏曲、リサイタル等で活躍しています。またCD録音も積極的に行っています。
近年はバロック・ヴァイオリンの他、バロック期に存在したヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ(肩かけチェロ)の復元・演奏にも深くかかわっています。現在ベルギー、ブリュッセル在住。

演奏を聴いてみますと、誤解を恐れずに言えば、ムター リサイタル CDモダン楽器による演奏に比べますと表情がストレートに感じられます。フレーズの柔らかさよりも歯切れの良さが目立ちます。テンポや音色の変化ではなく、主に強弱で表情を付けている。そういった演奏であると思います。
その結果、生き生きとしたモーツァルトの息吹がより浮き彫りになっているように思います。
有名なK.304のソナタの第1楽章を聴いてみましょう、現代楽器を弾く奏者の場合、たいていはもっと悲壮感を漂わせた、重い雰囲気の演奏をするのではないかと思います。試しに、アンネ=ゾフィー・ムターの演奏と比べてみますと、こんなにも違うのかとびっくりします。
ムターの場合はモーツァルトの音楽というよりは完全にロマン派の音楽になってしまっているでしょう。テンポは極めてゆっくりで、時々止まりそうですらあります。でもこれはAllegroなんですよね。表情は極めて濃厚、音色の変化は多様で官能的。
まさに寺神戸の演奏とムターの演奏は水と油。寺神戸の哀しみの表現はお涙頂戴的な大袈裟なものではなくごくさりげないものです。でもそれこそがモーツァルトの素の姿なのではないでしょうか。
もちろん弾く人間によって曲の解釈が異なり、表現の仕方も大きく違ってくるところがまた聴く楽しみでもありますから、ムターのような行き方も否定はできません。でも“古典派”の音楽ということを考えると、やり過ぎは禁物なのではないかと私は思わざるを得ません。あまりソースや調味料に凝るのではなく、味付けを単純にした方がかえって素材の旨味が生きることもありますよね。寺神戸亮とムターのモーツァルトを聴き比べてみてそのようなことを感じました。

楽器はライナーノーツに因りますとバロック仕様のヴァイオリン Givanni Grancinoとクラシカル仕様の ヴァイオリン Carlo Ferdinando Landolfi を曲により使い分けたとのことですが、その仕様の違いについては クラシカル・ヴァイオリンのご紹介をご参照ください。