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庄司 紗矢香|ショスタコーヴィチ ヴァイオリン協奏曲|CD

庄司 紗矢香、ショスタコーヴィチ ヴァイオリン協奏曲

KKC 5204

ショスタコーヴィチ:
ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調
ヴァイオリン協奏曲第2番嬰ハ短調

ヴァイオリン:庄司紗矢香
ドミトリー・リス指揮  ウラル・フィルハーモニー管弦楽団
録音:2011年 8月
使用楽器:Stradivari 1729 “Recamier ”(上野製薬株式会社より貸与)

庄司紗矢香については今さら詳しい経歴等を書く必要は無いでしょう。もはやそれぐらい誰にでも知られたヴァイオリニストになっていると思います。
演奏については初期の頃の技巧的が前面に出た屈託のないものから、より思索的なものになってきているような印象があります。年齢とともに演奏の変化がみられるのは当然のことですね。そういった意味ではこのショスタコーヴィチの協奏曲は現在の彼女にぴったりの曲とも言えるでしょう。特に第1番の1楽章冒頭、3楽章からカデンツなどでの曲への集中力は凄まじく、この曲のただならぬ雰囲気を聴いた人全てに感じさせてくれることと思います。

ただ、ちょっと気になるのがヴァイオリンの響きです。強く弾いた時の音の伸び、響きの豊かさが銘器としては少し不足している感がいたします。調整が不十分なのかもしれませんが、かなり音がつまって聴こえますね。これは録音のせいだけではないような気がいたします。
そのため、第1番の終楽章が物足りなく感じます。ここでは、それまでの重圧から解放され、オケもソロも怒涛のように先に進む爆発的なエネルギー感が欲しいのですが、楽器がいまひとつ鳴らないせいか小さくまとまってしまっています。
それでもおそらく実演であれば庄司が一心不乱に楽器を鳴らして聴かせてしまうのが常なのだと思います。しかし、このレコーディングに於いてはそこまで無理をしなかったのは賢明でした。楽器を強引に鳴らしたところで雑音成分が増すだけで、視覚で補うことができないCD観賞の場合はかえって聴き苦しくなってしまうだけだからです。
そういった意味からは、あまり激しい部分が出てこない第2番の協奏曲の方が楽器の音に関しましては成功しているように思います。

庄司は確かパガニーニ・コンクールの頃は小さいサイズ(7/8?)のヴァイオリンを弾いていたはずで、その後はPietro Guarneriを使い、次に日本音楽財団から貸与されたStradivari 1715 “Joachim”を使用。そして現在はエルマンが使っていたという表記のヴァイオリン、Stradivari 1729“Recamier ”を使用しています。
私が聴く限りでは、Pietro Guarneri のヴァイオリンの時代が音としては一番良かったのではないかと思います。
フィリアホールでこのヴァイオリンを使っている時期にリサイタルを生で聴いたことがありますが、豊かな音量、特に低音の量感には本当に驚きました。私個人的には、このヴァイオリンがあれば、StradもGuarneri del Gesuもいらいないとさえ思った記憶があります。それが、“Joachim”になりちょっと強引に鳴らすようなイメージが強くなり、“Recamier”なってもそれは変わっていないように思います。思索的な演奏のためには、あまり開放的でない響きのヴァイオリンの方が合っているのかもしれないのですが、私はあの時のヴァイオリン、Pietro Guarneri の音が未だに忘れられません。