クラシック演奏家のための デジタル録音入門 |生形三郎

書籍:クラシック演奏家のための デジタル録音入門

ISBN 978-4-276-24246-3
クラシック演奏家のための
デジタル録音入門

生形三郎著 / 音楽之友社

最近はコンクール、オーディションの予備審査、一次審査に音源による事前審査をするところが増えてきています。そういったとき、専門家に依頼してホールやスタジオで録ってもらえれば良いでしょうけれど、それなりに費用はかかるでしょうし、手軽にはいきませんね。また、そういった音源審査のためでなく、日常的に練習やレッスン。そして本番を録音しておいて、勉強のために聴き直したいと思うことは、楽器を演奏なさる方であれば音大生、音高生ならずとも皆さんおありでしょう。そういったときに皆さんどういったやり方をとられているでしょうか?
練習、勉強のためとはいえ、良い音質で録ることは大事だと思います。本日はそういったお話です。

私の学生時代は、まだカセットテープ全盛の時代でしたから、SONYのカセットデンスケという機械を担いで随分と生録をしたものでした。
その後はDATになり、そして今はハンディレコーダー(私はエディロールのR-09HR、R-05を使っています)で録音をしています。随分とそのおかげで機械は小さく軽くなり、装備は随分と身軽になりましたね。
カセットもDATもテープを回転させていましたので、どうしても回転系の故障が多く、閉口いたしましたが、今はSDカード等のメディアに記録するだけで、回るところがどこにもないので、録音中静かですし、回転系の故障が無いのは有難い限りですね。メカ音が全くしないのでマイク内臓が可能になり、コンパクトに持ち歩けるようになったわけですね。

この本はそのハンディレコーダーを使っての録音の仕方、そしてその後PCでの編集の仕方等について書かれたものです。内容は難しくないので、メカやPCに詳しくない女子の方にも充分ご理解できると思います。逆にPCに詳しいオタク系の人には全くつまらない役に立たない本になると思いますのでご注意ください。
カセットで録音している方はさすがに今はまさかいらっしゃらないと思いますが、未だにMDで録音しているような方がいらしたら、高音質で簡単にCD作成が可能であることなどの利点が大きいですから、すぐにこのようなハンディレコーダー、ICレコーダーをお求めになるべきだと思います。そういった方の手引書としてはこの本は最適だと思います。

次はどうやって良い音を録るかです。

上記のコンクール、オーディションの予備審査の場合、きちんと聴いているかどうかはそのコンクールやオーディションの事務局や審査委員の姿勢によるとは思いますが、聴いているとしたら、やはり録音の良し悪しが審査に全く影響しないとは言い切れないと思います。
もちろん、できるだけ録音状態に左右されずに、演奏だけを聴こうと皆さん集中されているとは思うのですが、レベルが低い(演奏のではなく録音の音量の意です)、雑音が入る(ノイズや外部の音等)、音が割れる、明瞭度に欠ける等々の問題がありますと、印象は決して良いものにはならないでしょう。チューニング時から音を入れて来ている人もいて、思わず笑ってしまったと裏を明かしてくれた審査員もいらっしゃいましたが、これなどは論外と言えるでしょう。

ここで録音講座を始める気は無いのですが、発表会、試弾会、練習等にお邪魔させていただいた際に、皆さんが録音機を置く場所を見ていていつも思うことがあります。
それは、殆どの方が演奏者から非常に遠い位置に録音機を置いているということです。
でもそれは間違いなのです。それでは良い音は録れないのです。その位置で録ると輪郭の甘いもやもやした音、暗騒音、雑音が多く、楽音が聴きにくい録音になってしまいます。録音がそういった聴き映えのしないものだと演奏がどんなに良かったとしても損することになりますよね。

確かに人が聴く場合、あまり演奏者に近づかない方が良く聴こえることが多いでしょう。また、遠くまで音が通っているかを離れた人に聴いてもらうこともありますから、その人の代わりにその場所に録音機を置くという発想もあるのかもしれません。しかし、絶対に演奏者から録音機を離し過ぎてはいけません。
人間の場合は視覚が聴覚を補っているために、少々離れていても、対象物の音を明確に聴き取ることができるのですが、機械の場合はバカ正直です。そういった適度な補正をかけてはくれません。ですから演奏者から離れれば離れるほど楽器の音以外の周りの音を多く拾うことになり、結果楽器の音は不明瞭になりがちということになるのです。響くホールであればある程それは顕著にななりますから要注意です。響くホールだからホールトーンをたっぷり入れてと、後ろの方の座席に録音機を置いたらまずそれは大失敗です。
耳で心地よいと感じる位置より、数メートル、座席で2~5列前に置くぐらいの勇気が無いと、良い音は録れません。(因みにこの本ではヴァイオリンの場合の録音機の最適な距離は楽器から1m前後と書いています)
もちろん、これは録音機のマイク特性、ホールの残響特性、演奏楽器によって最適な場所は違ってくるので、試行錯誤は必要ですが、人が聴いて最適と感じる場所には録音機を絶対に置かない、それよりも前に録音機を置くことにまず心掛けていただけたらと思います。

何だか本の紹介から脱線してしまいましたが、事前審査等で録音審査があるときに、是非今よりもより良い音で録っていただきたいと思い、日頃気になっていることを述べさせていただきました。