バイオリン(ヴァイオリン)販売・専門店・
弦楽器サラサーテ・東京(渋谷)から25分

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そちらに中古のヴァイオリンはありますか?

この質問もけっこういただきます。

実は弦楽器の世界には中古という概念がありません。

弦楽器の場合、一般の物品のように、人に使われたら中古として価値が減るという考え方をしないのです。
良い楽器は、長い間、何人もの奏者に受け継がれて使われていくことができます。
ヴァイオリンが古くなるのは「経年変化」ととられ、むしろ価値の有る望ましい現象ととられています。
ですから演奏家は夢中になって、できるだけ古く、弾き込まれたヴァイオリンを探しています。
そしてその結果、 単なる骨董的価値だけではなく現役の道具として、2000万円とか1億とかの値段が現実的に付いているのです。

例外として、量産楽器があります。これらは工業製品ですから、一般に言う中古という概念も当てはまります。
量産品は、一旦使用されると価値は著しく下がります。卑近な例では中古車を考えてみれば良いでしょう。

おそらく、話題になっている「中古」とはこちらのことを指しているのでしょう。

ヴァイオリンには2種類あります

それは、

1)工業製品としてのヴァイオリン

2)手工品としてのヴァイオリン

の二つです。
手工品としてのヴァイオリンは作られた時期により、更に新作モダン、オールドなどに区分されます。

新作とは文字どおり、作られて間も無い楽器を指します。
しかし、作り立ての楽器だけがそう呼ばれるかというと必ずしもそうではありません。
弦楽器の世界では、作られてから10年間経た楽器であっても、製作者が生きていれば、新作と呼ぶのが普通です。
一方、たとえ新しいヴァイオリンであっても量産品は新作楽器とは呼びません

手工品の楽器で、製作者がすでに亡くなってしまっているものは、年代により、モダン、オールドなどと呼ばれます。

この手工品のヴァイオリンは、実は、人が使い込み長い年月が経つほど良い音を出すと言われています。
(もちろんはじめから良くつくられた楽器の場合です。)
人が使っていた、ニスがはげた、傷がついたからといって、値段が安くなるという概念はこの世界には無いのです。 何せストラディヴァリウスなど、300年も経っても1億円とか3億円するものがあるわけですから・・・・・・。

一方、工業製品としてのヴァイオリン(カタログを作っているような楽器)には、 一般に言われる「中古」という概念が通用するかもしれません。これらは一旦使用された場合、価値は著しく下がることになります。

量産品については、一般的に弦楽器専門店での下取りはしておりません。それは専門店の多くは、量産品自体の販売をしないからです。
たとえ下取りをしてもらったことがあったとしても、その楽器(量産品)に価値があった訳ではなく、 新たに楽器を販売するための手段として、 やむを得ず引き取ったに過ぎないと思います。先に書きましたように、その店でりょさん品を売ることはないからです。
ですから、量産品の中古は、量販店、総合楽器店かリサイクルショップなどで販売されるか、ヴァイオリン教室の中やタウン誌、ネットオークションなどで売買(個人売買)されるかのいずれかではないでしょうか。

弦楽器専門店で量産品の楽器を引き取らないのは、古くなることで楽器自体が良くなる事が少ないからです。
また、伝統的な工法をとっていない楽器は修理、修理をしても音があまり良い方向に変化しません。
その上、プレス加工の楽器などの場合は、構造上、まず長期の使用には耐えられないのです。
ヴァイオリン族の弦楽器は長期に渡って使えるものであることが重要なのです。
このよう楽器を専門店で引き取ってもまずメリットはありません。それで、量産品の下取りは行わないのです。

もちろん手工ヴァイオリンでありさえすれば、全てが古くなってから価値が上がるというものでもありません。
古くなる以前(かつて新作であった時)に、もともと出来の悪かった 楽器は、いくら経年変化の恩恵を受けたとしても、決して事態は好転しません。

また、「経年変化」も、損傷や老化という形で現れますと、いくらもともとが良い楽器であっても、 だめになってしまいます。
適切でない修理などもこの損傷のうちに入ります。
つまり、ヴァイオリン族は、もともと資質があって、なおかつ良い歳のとり方ができないと、価値が出ないのです


外国から来る古い楽器はみな貴重のように思えますが、これは大きな間違いです。
これらをオールドと呼んでいる人も見受けられます。でもこれは本当に価値のあるオールドではありません。
これらの楽器は30万円ぐらいで買えることもあり、中古と呼ばれることもあります。

あこがれのオールドが安く手に入ってお買い得みたいに思う方もいらっしゃるかと思いますが、残念ながらこの手の楽器の中には道具として 満足のいくようなものはまずほとんどありません。
これらの中にはプロフェッシャナルではなく、ちょっと器用な人が趣味で作ったようなもの、それが古くなっただけというような楽器が多く見うけられるのです。
それらは、形が変、寸法が狂っている、隆起が不自然など・・・・・。見ただけで判る欠点を持っています。
つまり、ただ古いだけの楽器なのです。

これらは、もともと資質がないものが、ただ歳を取っただけなのです。

いくら古い楽器が安く手に入ろうとも、このような楽器には 決して手を出してはいけません。