Giuseppe Pedrazzini 1926 Milano(Guadagnini Model)

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この楽器はこの十数年間、私の大切なモノサシでした

「最も良いものに触れておけば、良くないものを嗅ぎわける力がつく」

( 轡田 隆史 「考える力」 をつける本2 より )

これはイタリアのモダンヴァイオリンの中での最良の1台に間違いない

楽器を見る眼を養う、楽器の良し悪しを判断するためのモノサシを自分の中に持つために必要なことはただひとつ、とびきり優れたもの、典型的なものを見ることだと思うのですが、このヴァイオリンはまさにそのために役立つような楽器です。モダンイタリーの典型的なつくり、模範的なつくりのヴァイオリンと言えるからです。

この Pedrazzini や Ornati そして Garimberti また楽器商としての力も発揮した Leandro Bisiach の尽力等によって 1900年初頭のイタリア、ミラノは隆盛を極めます。一方同時期トリノではFagnola が台頭してきておりました。

そういうわけで、この時代のミラノ、トリノの楽器は優秀な楽器を見る機会も多いのですが、このPedrazzini 1926 はその中でも抜きん出た存在と言えるでしょう。私は Giuseppe Pedrazzini のヴァイオリンの中でもこれは最高の部類の楽器だと思います。

眺めた時、持った時、圧倒的な存在感が楽器から伝わって来る、それでいて、決して押し付けがましさがありません。優れた楽器とは皆そういったもののような気がいたします。

見ている者の心にすーっと入り込んでくるような、そして優れた楽器になりますと、もはや本物とか偽物とかの疑いの念の差し挟む余地など全くなく、見終わった後には、一点の曇りもない清々しい気持ち、クリーンな印象だけが残ります。
この存在感は、絵画等の美術品もそうだと思うのですが、写真、画像、カタログ等からでは決して感じ取れるものではありません。是非現物に触れて実感していただきたいと思います。

モダンイタリーとは何ぞや?モダンイタリーってどんなヴァイオリン?という方

先生からモダンイタリーの中からヴァイオリンを選びなさいと言われた方

イタリアのモダンヴァイオリンを何台か見たけれどピンと来ないというような方

いきなり製作家名や価格等を調べ出し、それを目当てにヴァイオリンを闇雲に探してみても駄目です。
それは、楽器の本質、モダンイタリーの本質、良さが本当にわかっているわけではないからです。
その理由は、本物=本格的なものを知らないからです。そういったヴァイオリンに実際に触れていないからです。
まずはこの楽器のような、モダンイタリーの典型的なもの、エッセンスが凝縮された良いものに触れてみることから始めてください。何よりもまず、貴方の中にきちんとしたモノサシを作ること、それが大切なのです。

モノは確かに素晴らしい、状態も完璧。でも音はがっかり・・・ という楽器もモダンイタリーには少なくありません。ですが、このヴァイオリンにはその心配は全くありません。それは、偶然だったのですが、演奏家にリサイタルで実際に使用していただくという機会があったからです。

今から十数年くらい前だったでしょうか、横浜青葉台のフィリアホールでこれからリサイタルという外国人ヴァイオリニストが 当店に青くなって飛び込んできました。
何でも リハーサル中に自身の持つヴァイオリン(J.B.Vuillaume )の調子が悪くなり、盛大に雑音が出るようになってしまったというのです。

早速楽器を見てみますと、なんと 表板のジョイント(楽器中央の接合部、剥ぎ)がテールピースの下のあたりで剥がれてズレてしまっているではありませんか。これでは雑音も盛大に出るはずです。
リサイタルがもう数時間後に迫ってるので、修理していたのでは到底間に合わないということで、急遽在庫楽器の中からヴァイオリンを選んでいただき、コンサートにお貸しすることになりました。
そのとき数台の楽器の中から選ばれたのがこのヴァイオリン、Giuseppe Pedrazzini 1926だったのでした。

楽器をお貸ししたお礼にと、その晩のコンサートにご招待いただき、演奏を聴かせていただくことができたのですが、さすがプロのアーティスト、楽器を突然持ち替えたのにもかかわらず、音程に寸分の狂いも無くコンサートを終えられました。 もちろんコンサートは大成功でした。

終演後、コンサートの主催者からは ピアノリサイタルに急遽変更しなくてはならなかったところを救ってもらいましたと大変感謝され、 演奏者からは、(お貸しした)楽器が大変素晴らしかったので気持ち良く弾けたと喜んでいただきました。

私としても、その日は思いがけず、このヴァイオリン、Giuseppe Pedrazzini 1926 をコンサートホールで聴くことができ、またその楽器がプロの演奏、ホールでの演奏会に充分耐えうるものであることが証明され大変嬉しく思いました。 今でもこのヴァイオリンを見るとそのときの出来事がまるで昨日のことのように蘇ってきます。

その後、その演奏家はドイツのオケのコンマスに就任し、J.B.Guadagniniか何かの名器が彼に貸与されることとなったと聞きました。きっとご活躍のことだと思います。今では懐かしい思い出です。

 

Giuseppe Pedrazzini 1926 試奏動画とその感想(弓はE.Sartoryを使用)

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